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番外編2 十五年分の下書き

Author: みだん
last update publish date: 2026-09-28 16:00:52

婚約発表から五日が過ぎた頃だった。

「明日、時間を取れるか」

夕食の後、アルヴィス様が唐突にそう言った。

「明日、ですか」

「一日空けてほしい。予定は入れないでくれ」

「それは構いませんが……何かございますか」

彼は答えなかった。

ただ、少し困ったような、けれど隠しきれない何かを含んだ顔で視線を逸らした。

その表情が珍しくて、私は思わず彼を見つめてしまった。

いつも先を読み、迷いなく物事を決める人が、今は明らかに言葉を選びかねている。

「――秘密ですか」

「そういうことにしておいてくれ」

*

翌朝、彼が用意していたのは質素な二頭立ての馬車だった。

紋章もなく、装飾もない。

護衛も最小限で、シェラすら同行しなかった。

「どちらへ」

「行けば分かる」

その言い方に、私は少しだけ意地悪をしたくなった。

「殿下ともあろうお方が、行き

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